Smiley face
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「おむすび」の福岡県糸島市ロケにあわせた会見で、笑顔を見せる出演者。(左から)松平健さん、橋本環奈さん、仲里依紗さん、宮崎美子さん=2024年4月、福岡県糸島市、山本壮一郎撮影

 「糸島のトマトは別格やけん」

 3月まで放映されたNHK朝の連続テレビ小説「おむすび」。福岡県糸島市などが舞台だったが、そのセリフに「ん?」と首をかしげた糸島市民は少なくなかった。「いトしま」(カタカナは高い音を示す)というアクセントだったからだ。

 「『いトしま』は共通語の言い方。地元の人は平板に『いとしま』と言います」。日本方言学が専門の中村萬里(まさと)・筑紫女学園大名誉教授(71)は話す。KBCラジオ「中村しぇんしぇ~の好いと~と糸島」をもつ生粋の糸島人。市幹部(66)もそのアクセントに「いりいり(イライラ)してました。違うやろうが、と」。「気になった」「違和感がある」と周りでも話題になった。

 市文化課の職員も「なんか変な感じだった」。明治時代に怡土郡と志摩郡が合併して糸島郡となったが、「東京では糸島は島だと思っている人が結構いる。そうすると『いトしま』という発音になるのかも」と推測する。

 一方、市観光協会のスタッフは「『いとしま』は田舎っぽい。最近は都会的に『いトしま』と言う人が増えてきた」。自身も福岡市内に通ううち「いトしま」に変わったという。

糸島も福岡と同じ道?

 中村さんによると、普通名詞は若者の間でアクセントが平板化する傾向がある。「彼氏」「パンツ」などがその例だ。ただ地名は逆のケースがある。「福岡」も20年ほど前は地元の高齢者ほど「ふくおか」と平板に言っていたが、今は2音目が高い「ふクおか」に席巻されたという。「糸島」も同じ道をたどっているのかも、とみる。

 「言語は変化するもの。『いトしま』を否定はしません」と中村さんは言う。ただ、糸島の農家を演じた松平健さんまで「いトしま」と言うのに違和感が募り、見るのはやめた。「ちなみに西日本は『おむすび』じゃなくて『おにぎり』だと思います」

 同じ地名をアクセントで区別するケースもある。山口市中心部で生まれ育った介護職男性(53)は「ヤまぐち」と言うと市中心部、「やマぐち」と言うと萩や下関も含めた県内を意味するという。「最近の人はどっちも『やマぐち』になってますけどね」。「フランクに話す時は『ヤまぐち』、かしこまった場では『やマぐち』になる」という60代女性も。地元の方言研究者によると、もともと山口は「ヤまぐち」だったが、その名が県全体を示すようになり、アクセントで区別するようになった可能性があるとのことだった。

 こうしたアクセントの違いは、放送関係者にとって悩みの種のようだ。

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くまモンは平板?頭高?

 地名は地元のアクセントにあ…

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