5月11日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は川野里子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。
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川野里子選
強まった雨脚直後落雷のように大きな妻天国へ(広島県)水野 英明
神の手に洗髪されるときを待つよう不祥事を謝罪するひと(春日部市)宮代 康志
万博の心臓だけの心臓が止まったときは死んだというの?(武蔵野市)香月真理子
さくら花舞ひ散るコース水鳥のごとゆつくりと行く教習車(八尾市)水野 一也
早朝に蕾はぶーんぶーん唸っていたそれから午後に桜は咲いた(滋賀県)木村 泰祟
暁に不如帰(ほととぎす)鳴き水戸(みと)刑務所(けい)は豪華な春となりにけるかも(八尾市)宮川 一樹
スケボーにまたまたこけてまたこけて夕日に光る子のヘルメット(前橋市)田村 とむ
入社して一週間で退社する一部始終を見てゐる桜(横浜市)滝 妙子
黒ずくめの通勤電車のなかにいて菜の花色の我は旅人(水戸市)佐藤恵美子
関税のかかったような価格なりわたしの町でとれたお米は(金沢市)竹内 一二
【評】1首目、臨終の妻は「落雷」だった。存在の大きさが胸に迫る。2首目、なるほど、神の洗髪を待つための低頭だ。3首目、iPS細胞で作られた心臓に死はあるのか? そもそも生き物なのか? 5首目、咲こうとする桜のエネルギーの凄(すご)さ。
佐佐木幸綱選
山寺にグランドピアノ届けら…