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朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 6月1日付朝日歌壇の入選歌36首をお届けします。今週は永田和宏さんが海外出張のためお休みで、選者は川野里子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。

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川野里子選

 こんなにも骨の浮き出る身体して笑うごと見ゆガザのみどりご(観音寺市)篠原 俊則

 友達や家族とけんかしたときのぼくは素数になった気分だ(奈良市)山添 聡介

 バンザイの姿に干されたトレーナー完走したなシニアマラソン(船橋市)藤本 典裕

 ふるさとを離れることを受け入れた日の目で父がはく紙パンツ(和泉市)星田 美紀

 他人へと渡りし食堂 非常口に巣づくりはじむ燕は今年も(市川市)山崎 蓉子

 ゴミ袋出しましたかと老い妻の寝言が破る真夜のしじまを(横浜市)丸岡 良雄

 妻の部屋ノックもせずに開けてみる逝きてふた月姿の見えず(秦野市)八木  実

 少しだけ開いたリュックの隙間からレジャーシートが羽化する五月(東京都)音羽  凜

 わが庭にのそりと顔出す猫はみな旅の途中という顔をする(福岡県)末松 博明

 徘徊の母は窓から抜け出して探しぬ十五で逝った弟(西東京市)佐々木節子

 大用水路と大排水路時に寄り時に離れて穀倉を行く(水戸市)檜山佳与子

 やわらかき田に印(しる)された十字架のひとつひとつに苗を植えゆく(佐渡市)藍原 秋子

 【評】一首目、飢餓状態にあるガザ。それでも嬰児(えいじ)は笑おうとする。報道画像から独自なものを見取った。二首目、素数は孤独だ。四首目、老いを受け入れる目だ。六首目、妻の存在感は圧倒的。十二首目、苗の一つ一つが祈りだ。

佐佐木幸綱選

 この村の風が好きだといふや…

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