朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 6月8日付朝日歌壇の入選歌36首をお届けします。今週は永田和宏さんが海外出張のためお休みで、選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、川野里子さんです。

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佐佐木幸綱選

 年一度一大イベント三世代男七人田植機囲む(広島市)金田 美羽

 残雪の逆さ鳥海山を田植機は波紋広げてゆらりとゆらす(酒田市)三笠喜美夫

 「元バイトですが」と言えば老人はマスクはずしてマスターとなる(横浜市)山崎  垂

 真っ青な海に向かって雪渓をスキーで飛ばす春の鳥海山(魚沼市)磯部  剛

 聴診器を出刃包丁に持ちかえて乗っ込み大鯛を捌く息子は(長岡市)柳村 光寛

 ペリリューの島で戦死して八十年今拾われる兵士等の骨(神奈川県)高橋 静一

 南方の戦場を思い出すからと死ぬまでバナナを食べなかった父(名古屋市)山守 美紀

 洗い熊網戸を破り侵入すしばらく暴れて来た道帰る(茨木市)窪田 宣子

 木の洞に営巣中の表示ありウワーンと飛び交う蜜蜂忙し(つくば市)藤原 福雄

 肩と膝乾いた鼻水ついておりさっきまで此処に子がいた名残(ひたちなか市)安澤 美幸

 トランプの後ろで愛想笑いする男のようなわたしの立場(金沢市)竹内 一二

 四度目の断捨離する手でそっとなで高橋和巳棚に戻しぬ(東京都)手塚 洋子

 【評】第一首、数詞を四つ使って、年に一度の家族的イベントを作品化。第二首、水に映った鳥海山を揺らす田植え機がドラマチック。第三首、昔、アルバイトをしていた店を久々にたずねた場面。下句のユーモラスな表現に注目。

高野公彦選

 五能線三十秒の停車中りんご…

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