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写真・図版
朝日俳壇の4選者。左から永田和宏さん、佐佐木幸綱さん、川野里子さん、高野公彦さん=2025年3月7日午後0時7分、東京都中央区、杜宇萱撮影

 8月24日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、川野里子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。

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永田和宏選

 座っても床に届かぬ靴下の白が揺れてる面会の母(大阪府)山岡 光子

 エノラ・ゲイとはその母の名ぞ広島に投下後如何(いか)に彼苦しみき(小美玉市)津嶋  修

 あの頂上にかつて登ったことがある見えれば見ている槍ケ岳の槍(館林市)阿部 芳夫

 焼岳の噴煙低く流るる日硫黄が臭ふ鍋平駅(名古屋市)木村 久子

 月一で知らない住所に手紙出す傷病手当金請求書(調布市)横山 圭子

 ゆふひかりほのかに透けて飴色のガラス細工のごとき空蟬(八尾市)水野 一也

 この水は阿蘇山系に降った雨八十年の時かけて湧く(竹田市)伊藤信一郎

 鉄腕も鉄人もいた優しさと強さが憧れだったあのころ(観音寺市)篠原 俊則

 この家に入ればあなたが城主だとおだてる夫はよき家臣なり(栃木県)小谷野代志子

 若き頃蚊が酔う程も飲んだ酒いまは刺した蚊ほろ酔い程度(伊予市)福井 恒博

 【評】山岡さん、面会のわずかな時間にふと気がつくと、足も床に届かないほどに小さくなった母が目の前に。津嶋さん、エノラ・ゲイは爆撃機の機長の母の名であった。その後の苦しみや如何に。最後の二首、(笑)。私を刺す蚊はすぐ墜落する。

川野里子選

☆野草摘み「たくさん食べまし…

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