Smiley face
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田中涼介選手は、亡くなった植次さんの写真をいつもカバンに入れている=2024年8月6日午後3時2分、鈴木優香撮影
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 札幌日大の田中涼介選手(3年)は父とプレーを振り返る時間が好きだった。

 植次(しげじ)さん(享年57)は、小学校・中学校と1試合も欠かさず、ビデオで撮影してくれた。

 「初心者のくせに」。アドバイスをしてくる父にはじめはそう思った。だが父の指摘は的確で、自分の長所である思い切りのいい打撃の土台をつくってくれた。

 素振りを日課にしていた中学生の時、「鏡いるか?」と父に聞かれた。車庫の中に鏡が取り付けられていた。自分のスイングの動きがイメージ通りか確認しやすく、質が上がった。

 高校1年の冬、父にがんがみつかった。野球に専念していたため、お見舞いにはなかなかいけなかった。初めて病室に会いに行くと、やせ細った姿でベッドに横たわる父がいた。

 「最近野球どんな感じ?」と…

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