完成した限定ラベルのソース

 地元で50年以上親しまれた東京都北区の老舗ソースメーカーの工場が取り壊される。思い出を残そうと、原材料の野菜がデザインされた限定ラベルのソースを作り、地元の子どもたちも一役買った。

 ソース作りに取り組んだのは、1923年創業のトキハソース。生野菜のうまみを詰め込んだ非加熱の「生ソース」は、フルーティーな香りや甘みで人気だ。板橋区から70年代に移転され、北区の滝野川地区で50年以上生産を続けてきた。

 しかし、施設の老朽化で、工場の建て直しが必要になった。地元での再建を目指したが、騒音などへの対応が必要な住宅地にあり、作業場の広さを制限する区の条例に抵触することから断念。昨年夏からは埼玉県志木市の工場で全てのソースを製造している。

 トキハソースは周辺の小学校の給食に使用され、かつては工場見学を受け入れるなど、子どもたちにとってもなじみの調味料だった。

 そこで、同社は子どもたちに地元でソース作りが行われていた記憶をとどめてもらおうと、大手文具メーカーのぺんてるに協力を依頼。子どもたちが工場をキャンバスとして絵を描き、その絵をソースのラベルに活用することになった。

 7月20日のイベントには地元の小学生ら計102人が集まった。アーティストのミズグチグッチさんに手ほどきを受けながら、約30メートルの工場の壁にタマネギやショウガ、セロリなどソースの原料となる野菜や果物を赤や青などの絵の具で描いた。

 ソースのラベルはミズグチさんがデザインし、完成したソースは子供たちにも送られた。トキハソースの田口直樹専務は「イベントやラベルを通じて、いつまでも工場の思い出として残っていってもらえれば」と話す。ソースは1本税込み540円。数量限定。同社のホームページから購入できる。

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