東野芳明の教え子でもある海老塚耕一作品(手前)や横尾忠則作品が並ぶ「東野芳明と富山県立近代美術館」の章の展示

 戦後日本の前衛美術の国際的再評価が進む。その過程で頻繁に耳にするのが、美術評論家・東野芳明(とうのよしあき)(1930~2005)の名前だ。運営委員(当時は富山県立近代美術館)を務めた富山県美術館で、戦後美術界を疾走した活動を、評した美術家の作品などで検証する「没後20年 東野芳明と戦後美術」展が開かれている。

 ルポルタージュ絵画の池田龍雄の作品があれば、米抽象表現主義のジャクソン・ポロックや、ポップアートのアンディ・ウォーホルの10点組みの版画「マリリン」があり、荒川修作や篠原有司男、横尾忠則の作品も続く。米国を中心とした戦後の欧米、日本の現代美術の教科書のような作品群が、東野の幅の広さを物語る。

 1954年にパウル・クレー論でデビューした東野は、58~59年に欧州、米国に渡ったのを皮切りに何度も渡米し、美術家たちと直接交流し、著書「現代美術 ポロック以後」などにまとまるライブ感あふれる評論を手がけていった。

 同世代の針生一郎(1925~2010)、中原佑介(1931~2011)と並び、美術評論の「御三家」と呼ばれた。富山県美術館の遠藤亮平学芸員は「今では巨匠と目される欧米の美術家と親密になり、その情報、評価をいち早く日本に伝えた。評論には、針生さんのような政治性とも、中原さん的な論理性とも違う、軽やかさがある。その軽さゆえに時代に順応し、最新の動向をすばやくキャッチした」と評する。

 早い時期の評論でも、例えば…

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