独身主義者だった弁護士の原田幸太郎(阿部サダヲ)は、美術教師の鈴木ネルラ(松たか子)と電撃的に結婚する=テレビ朝日提供

「撮影5分前」 テレビ朝日プロデューサー・田中真由子

 誰も見たことがない役。今夜放送開始のドラマ「しあわせな結婚」(木曜夜9時)で松たか子さんが演じる鈴木ネルラは、まさにそういう表現がふさわしい。

 宮沢賢治が好きだった母の影響で、「銀河鉄道の夜」の登場人物カンパネルラから「ネルラ」と名づけられた。

 母をすでに亡くしているネルラは、過去にまつわる謎がつきまとうミステリアスで魅惑的な女性。あまり笑顔を見せないが、夫となる原田幸太郎(阿部サダヲ)を突然、家に誘うなどとっぴなことをする。

 本作はネルラの秘密をめぐるサスペンスだ。一方で、夫婦の愛を描くホームドラマであり、幸太郎とのやりとりにチャーミングな面ものぞかせる。

 ネルラはこのドラマを性格づける重要な役であり、感情をどう出すのかバランスが難しい役でもある。

 「名優にいちいち指示したくない」という大石静さんの脚本は潔い。細かいト書き(役者の表情や動きなどセリフ以外の部分)は書かずに演出や芝居に委ねる。

 それに応える松さんの、まさに「これがネルラだ」という説得力ある演技に引き込まれる。そんなネルラをめぐる驚きの秘密が、今夜の初回で早くも明かされる。

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