松本人志さん=2017年撮影

 お笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志さん(61)が、自身の性加害疑惑を報じた昨年12月27日発売の週刊文春の記事をめぐって、発行元の文芸春秋などに5億5千万円の損害賠償と訂正記事の掲載を求めた訴訟は、松本さん自身が訴えを取り下げ、幕を閉じた。松本さんは芸能活動再開をめざすとみられるが、テレビ局の事情にも詳しい元テレビ朝日法務部長の西脇亨輔弁護士は、現状を「松本さんをめぐる文春の第一報が出た昨年12月の、あの瞬間に戻ったと考えられる」と指摘する。今回の訴訟や、松本さんや所属する吉本興業、そしてレギュラー番組が残るテレビ局に求められる今後の対応などについて話を聞いた。

  • 松本人志さんの訴訟取り下げ背景は 説明ないまま、テレビ復帰は

 ――松本さんは、今年1月8日に自身のX(旧ツイッター)で「事実無根なので闘いまーす」などと投稿。同22日、発行元の文芸春秋などに損害賠償と訂正記事の掲載を求めて、訴訟を起こしましたが11月8日、自ら訴えを取り下げました。松本さんが求めていた賠償金や謝罪広告がなく終結した、今回の裁判をどのように評価しますか。

 松本さんが、提訴という形で振り上げた拳を自分で下ろし、法廷闘争を「諦めた」とみることができます。松本さんは、裁判に注力するために活動を休止していたので、取り下げは、芸能界への復帰を見据えての動きかもしれません。

 取り下げの場合、訴えられた側からすれば、応戦する必要がなくなることを意味します。だから、文春側が同意するのはごく自然。文春側にとっては、被害を告発した女性が出廷する必要がなくなり、女性を守ることにもつながります。

 ただ今回の裁判は判決に至らなかったので、白黒はっきり決まったわけではありません。両方に主張の余地が残っているので、もやもやしている人がいるのでしょう。

 現在の状態は、松本さんをめぐる文春の第一報が出た昨年12月のあの瞬間に戻った、と考えるのが妥当です。文春側と松本さんの裁判が、形式上何もなかったことになっただけ。疑惑は残ったままです。

物的証拠の有無は、ポイントだったのか?

 ――そもそも、「取り下げ」…

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