松江ゆかりの作家、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の伝記小説「黒い蜻蛉(とんぼ)―小説 小泉八雲―」(佼成出版社、2750円)が8月末に出版された。同郷のアイルランド人作家が、日本をこよなく愛した八雲の人生を描き出した。

 八雲はアイルランドで幼少期を過ごし、米国での記者生活などを経て来日。「雪女」「耳なし芳一」「ろくろ首」など日本の怪談を世界に紹介した。

 本作で八雲は、父母の愛を受けられなかった生い立ちや、小柄な体や浅黒い肌、隻眼などから、劣等感に悩まされ続ける。そしてそんな八雲が松江で、自然や先祖、神霊に畏敬(いけい)の念を持ち、自分より周囲を思いやる日本人の精神文化に触れて解放され、ラフカディオ・ハーンから日本人「小泉八雲」になったと描く。

 来秋の朝のNHK連続テレビ小説「ばけばけ」で主人公となる八雲の妻、セツも登場。つつましく、おしとやかで働き者のセツは、かんしゃく持ちの八雲を常に見守る。新聞を読んで聞かせたり、様々な怪談や民間信仰などを教えたりして創作活動も支える。八雲の率直な愛情表現に戸惑いつつも、仲むつまじく添い遂げる。

 著者のジーン・パスリーさんは脚本家で、大学入学前に訪れた日本に魅せられ、7年半滞在。最も打ち込んだ合気道は5段の腕前。母国で道場も開いているという。

 八雲のことを知ったのは来日…

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