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敦賀気比―横浜 二回裏横浜2死三塁、奥村凌は適時二塁打を放つ=吉本美奈子撮影

(8日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 横浜5―0敦賀気比)

 3点リードで迎えた二回裏2死三塁。横浜の1番・奥村凌大(3年)が打席に立った。「相手は粘り強い。なんとしてももう1点ほしい」

 カウント1―1からの3球目、真ん中に入ったチェンジアップを捉えると、打球は左中間を破った。「上がりすぎたが外野を抜けて良かった」。三塁走者が生還し、貴重な追加点を挙げた。

 神奈川大会は打率1割6分7厘と不調だった。自分の成績に悩み、副主将なのにチームをまとめる余裕はなくなっていた。

 転機となったのは、神奈川大会期間中の練習だ。主将の阿部葉太(3年)が村田浩明監督にチームのことで怒られ、涙を流していた。「阿部を一人にさせてしまった」。阿部葉だけでなく、副主将の自分もチームのことを考えなければ。そう思い直した。

 打撃の調子が上がらなくても、チーム最多タイの8四死球でチャンスをつくり、先頭打者として後続に相手投手の特徴を伝えるなど、チームプレーに徹した。

 準々決勝の平塚学園戦、九回2死2ストライクまで追い込まれた。三塁走者として、とっさにタイムをかけ、靴ひもを結んだ。逆転サヨナラ打を放った阿部葉は、「リセットする時間ができた」と感謝する。

 この日は初回にも、四球を選び、先制のホームを踏んだ。頼れる副主将は次戦に向け、「みんなが連れてきてくれた甲子園。ヒットにこだわらず全員でつないでいきたい」。

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