スタッフによる定例ミーティング。受刑者一人ひとりの状況を共有していた=2024年11月、札幌市東区の札幌刑務所、新谷千布美撮影

現場へ! 刑務所の「IPPO」(3)

 「幻聴と不眠がわーっときてしまったそうです。『キツネの声が聞こえる』と」

 格子窓のついた札幌刑務所の会議室。2024年11月、精神障害のある受刑者に特化したプログラムを行う専門棟「IPPO(いっぽ)」の一角で、スタッフらがミーティングをしていた。

 新たに刑務所に入った人のうち、再犯者の割合が障害のない受刑者より高い。IPPOの受刑者の入所回数も、平均4・7回だ。どうすれば犯罪を繰り返さないか。

 IPPOでは、刑務官を中心に、精神科医、看護師、作業療法士、社会福祉士、ソーシャルワーカーら、複数の専門職による「チーム」が作られ、月1回、情報を共有。連携して対応を検討している。

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 この日のミーティングで、1人の受刑者に焦点があたった。

 刑務所から出所後に受け入れてくれる更生保護施設を探していた。だが、そのための面接を終えた直後、幻聴などの統合失調症の症状が悪化したという。

 担当の刑務官が言う。「腰痛も訴えています。表情も硬い。整理整頓するタイプなのに、居室の中でゴミを投げつけていました」

 作業療法士が続けた。「腰痛は精神的な症状と連動したものかもしれない。面接のストレスで、(心身の調子が)一気に崩れた印象です」

 この受刑者は、もともと人と…

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