コラム「トランプ法廷」①
朝5時半のマンハッタンは静かだ。鳥のさえずりが響き、行き交う車も少ない。
まだ薄暗いウォール街を過ぎ、刑事裁判所に着いた。すでに十数人の報道陣が並んでおり、その列に加わった。
ドナルド・トランプ氏(77)の初公判が始まる。米国の歴史上、初めて大統領経験者として刑事訴追された。トランプ氏は次の大統領候補でもある。先頭に並ぶドイツのテレビ記者は、午前4時に来たという。続くのはイタリアの新聞記者。取材パスを持たないため、先着順での傍聴をめざす海外メディアが目立つ。トランプ氏が有罪になるのか、それぞれの母国でも関心が高いという。
夜が明けると行列は100人を超えた。先着20人ほどの枠になんとか滑り込むことができた。午前10時の開廷を前に、古びた裁判所の建物に入った。
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ガタゴトと音を立てるエレベーターで15階へ。法廷に入ることが許されたのは6人だけで、残る90人あまりの記者たちとともに、向かいの「オーバーフロー・ルーム」で大型モニターを通じて公判を見守った。
トランプ氏が法廷に、ところが……
「歴史的な公判が始まる」と…