米兵が運転する車にはねられて亡くなった伊藤翼さんの遺影が置かれた仏壇=2025年8月3日、横須賀市、玉那覇長輝撮影

 「米軍が優遇されたままだと、同じような事故が繰り返される。息子の死は何だったのでしょうか」。横浜地裁横須賀支部で5月にあった米兵による交通死亡事故の裁判。事故から垣間見えた日米地位協定の「壁」を思い知らされた母親(56)は、こう問いかける。

 息子の伊藤翼さん(当時22)は昨年9月、神奈川県横須賀市内の国道をバイクで通勤中、右折禁止の交差点を曲がってきた米兵の車と衝突し、死亡した。米兵は自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)の罪に問われ、禁錮1年6カ月執行猶予4年の判決を言い渡された。

 被告人質問で米兵は事故後に「交際相手の車を週4回ほど運転していた」と述べた。軍は運転について制限しておらず、基地内にある仕事場から自宅までの通勤に使っていたという。

  • 米兵は執行猶予判決なら帰国、運用判明 「事実上の無罪放免」指摘も

米軍発行の「許可証」とは? 行政処分は対象外

 米兵やその家族らは軍発行の「在日米軍個人車両操縦許可証」があれば基地内だけでなく、日本の公道も運転できる。日米地位協定10条にもとづく措置だ。

 米兵らが交通違反をした場合、刑事事件になることもあるが、行政処分は受けない。警察が違反の内容を米軍に伝えるだけだ。米軍が違反者をどう処分するかは日本側には知らされない。

 一方、各都道府県の公安委員…

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