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デザイン・郭溢

 7月上旬の蒸し暑い夜、北京に出張していた企業経営者の中国人男性(44)は、男性顧客2人との会食を終えてカラオケ店に連れ出そうとした。だが、「今回はやめておく」と断られた。

 数カ月に1回は出張で訪れて商談をし、その度に食事をともにする気心が知れた仲だ。1次会の後はカラオケに流れて飲み直すのがお決まりのコースだった。

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受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

 顧客の2人は1次会でも、いつもなら飲んでくれるアルコール度数が50%以上ある中国の蒸留酒「白酒」を勧めても手をつけず、この日はビールだけだった。

 「いま酒で羽目を外すとよくないから」

「史上最も厳しい」禁酒令

 男性は顧客が帰り際に発したその言葉で理解した。2人は大学関係者で、中国のメディアなどで「史上最も厳しい」と盛んに取りざたされている「禁酒令(チンチウリン)」を気にしていたのだ。

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甘粛省蘭州市のレストランで、春節の年越し料理を楽しむ人たち=新華社

 中国語では禁酒を一般的に「戒酒」と言うが、この場合は自ら絶つというニュアンスがある。「禁煙」も「戒煙」だ。一方、禁酒令は当局が飲酒を制限する規則を厳格化したことを受け、メディアやネットで使われるようになった。

 習平(シーチンピン)指導部…

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