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社会保障・保育政策研究者の前田正子さん

 子育てがつらい――。そんな切実な声が様々に発信されるようになりました。社会保障・保育政策研究者の前田正子さんは、母親たち一人ひとりの声が集まって見えてくるのは「母の壁」だと言います。その壁の正体とは。話を聞きました。

苦しいのは「個人の問題」ではない

 7年前、関西地方のとある市で、認可保育園に入所申請した全世帯を対象にアンケートを実施しました。回答を見て驚いたのは、アンケートの最終ページの自由記述欄です。びっしりと書かれたものが少なくなかった。手書きのアンケートなのに、です。「こんなに言えない思いがあったのか」とがくぜんとしました。だれにも相談できず、見ず知らずの相手に思いのたけをつづったのでしょう。

 集まった声は、どれも個人的な体験です。保育所に入れた人、入れなくて仕事をやめたり内定を断らざるをえなかったりした人、パートで働きたい人やバリバリ働きたい人など立場も異なります。ところがそれらを俯瞰(ふかん)して見た時、子育てする人が苦しむのは個人の問題ではなく、社会の構造の問題だと見えてきました。

奪われる自由な人生の選択

 まず、「保育の壁」はとても…

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