気候危機は待ったなしなのに、政治や行政は何をしているのか――。若者たちが司法に救いを求めようとする動きが東アジアでも広がり始めた。欧米で先行していたが、昨年、韓国で最初の判断が出され、日本や台湾でも係争中だ。当事者たちが教訓を共有する取り組みも進む。
韓国での訴訟は、2020年3月、当時10代の若者19人が提訴。国が掲げる温室効果ガス削減目標が不十分だとして、基本的人権の擁護に違反していると訴えた。憲法裁判所は昨年8月、31年以降の削減計画が定められていないのは違憲との判断を下し、26年2月28日までに関係法を改正するよう命じた。
同様の気候訴訟は、これまで欧州や米国が中心だった。たとえば、19年12月のオランダの最高裁判所が、同国の温室効果ガス削減目標を違法とした判決▽21年3月のドイツの憲法裁判所が政府の気候変動対策が不十分であるとした決定▽24年4月、スイス政府の気候変動対策は不十分で人権侵害にあたるとした欧州人権裁判所の決定――などがある。
今回の韓国憲法裁の判断は、アジアでは初めてで注目されていた。憲法裁は、気候変動は「国民の生命・身体の安全などを脅かし、生活の基盤となる環境を損なう具体的な危険状況に該当する」と指摘。「未来世代は気候危機の影響に、より大きくさらされるにもかかわらず、現在の民主的な政治過程に参加することが制約されている。中長期的な温室効果ガス削減計画について、立法者にはより具体的な立法の義務と責任がある」としている。
参加者数ふくらむ「気候マーチ」
昨年来、韓国内では気候訴訟が相次いでいる。政府の不十分な温暖化対策が人権侵害に当たるとする高齢者による不服申し立てや、韓国鉄鋼大手ポスコの高炉改修が、温室効果ガスの排出増につながるとして工事の中止を求めた若者10人による訴訟などだ。原告を支援したNGO「ソリューションズ・フォー・アワー・クライメート(SFOC)」CEOのキム・ジュジン弁護士は、「訴訟を始めた当初は小さな動きだったが、憲法裁の判断が出たことで、『本当にできるのだ』という達成感が芽生えた」と話す。ソウルでの抗議活動「気候マーチ」への参加者は19年9月には5千人だったが、判決後の24年9月には2万人以上にふくれた。
3月、日本のNGO気候ネッ…