Smiley face
写真・図版
奥村智司・論説委員補佐
  • 写真・図版

 「公害の原点」と言われ、教科書に載る水俣病。公式確認から69年が経つ今も、その被害の広がりを解明するための調査が一度も行われていないと聞けば、驚かれるのではないだろうか。

 問題の解決にあたっては、事態の全容把握が大前提だ。だが、原因企業チッソの工場排水を止めず、被害の拡大を放置した国は、調査に後ろ向きな姿勢を続けてきた。自らの過去の失敗から目を背けるかのように。

 そうした国に対して、被害地と周辺の住民の「健康調査」を行うよう定めたのが、「あたう限り」(できる限り)の救済をうたった水俣病被害者救済法(特措法)だ。法の施行から16年経過した今年度、環境省はようやく予備的な作業に着手する。どのような調査になるのか、同省で水俣病の問題を担当する特殊疾病対策室に取材した際、室長から耳を疑う発言があった。

 被害の広がりを捉えることを…

共有