(17日、第107回全国高校野球選手権大会3回戦 沖縄尚学5―3仙台育英 延長十一回タイブレーク)
沖縄尚学にとって、最後にして最大のピンチだった。十回1死満塁で、2年生エース末吉良丞の投球は2球続けてボールになった。
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四球なら押し出しでサヨナラになる。「末吉を信じるしかなかった」と主将で遊撃手の真喜志拓斗。「スクイズはまったく想定していなかった」
2022年に東北勢として初の全国制覇を果たした仙台育英の須江航監督はしたたかだ。絶対にストライクを取りたいこのカウントで、そのスクイズが来た。
だが、剛腕が縮こまることはない。「バントをできるものなら、やってみろ」。渾身(こんしん)の真っすぐで、バットをはじいた。「あの3球目は内角を要求した。厳しい球だったのでファウルになった」と捕手の宜野座恵夢。仙台育英はこの後、ヒッティングに切り替えたが、一直併殺。ピンチを脱した直後、沖縄尚学に決勝点が入った。
明暗を分けたこの場面を、須江監督は振り返る。「もう1回スクイズにいけばよかった。判断があいまいになった。采配ミスです」。そして、「末吉くん、満塁でよく立て直した。2年生で本当に末恐ろしい」とも。つまりは、末吉の力が上回った結果だった。
末吉は浦添市出身。近年、沖縄から県外に進学する有望選手も多い中で、県内に残った。理由は明快。「沖縄で県外の高校を倒すことに価値があると思った」。あこがれるのは、1999年にエースとして、2008年に監督として選抜大会を制した同じ左腕の比嘉公也監督だ。
夏の3勝はチーム史上初めて。「てっぺんを取る」と末吉。島人(しまんちゅ)の誇りを胸に、8強の戦いに向かう。
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