戦後80年の沖縄慰霊の日に合わせ、国連の軍縮部門トップ・中満泉事務次長が沖縄を訪問した。23日の沖縄全戦没者追悼式に参列するなど県内各地を訪れ、「(世界の)多くの民間人が80年前の沖縄と同じような状況にいる今こそ、平和の意味を考える必要がある」と記者団に語った。
県の招待で、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)の田中重光代表委員とともに22日から訪問。追悼式ではあいさつに立ち、参列した遺族らを前に「真の安全保障と平和は、軍事力、軍拡競争によって達成されるものではない。国家間の信頼関係が崩れている今こそ、戦争への道ではなく平和と共存への道を、そして核兵器のない世界への道を、冷静に探ることが必要です」とあいさつした。
その後、沖縄戦前年の1944年8月に米軍に撃沈され、少なくとも1484人の児童らが犠牲になった「対馬丸事件」を伝える対馬丸記念館も田中さんと見学。24日夜のシンポジウムにも登壇し、「民間人の保護、人道的な取り扱いを確保していくことは軍縮の分野でも重要な課題。沖縄でこれだけ多くの民間人が犠牲になったという教訓を、私たちは生かしていかなければならない」と語りかけた。
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県によると、国連事務次長が沖縄戦の追悼式に出席するのは初めて。中満さんは23日の式典後、米国によるイラン空爆やイスラエル・イランの情勢などを念頭に「(日本政府は)各国に、これ以上のエスカレーションを防ぐ働きかけを積極的にしてほしい」と記者団に語った。
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