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現在のビール神社。住民の要望で、海岸へつながる一本道が参道のように延びている=2025年4月24日、宮城県石巻市北上町十三浜白浜

 日本酒の代わりにビールをお供えする、世にも珍しい「ビール神社」が、宮城県石巻市沿岸部の集落にある。東日本大震災で津波にのみ込まれ、現在あるのは、小さなほこらのみ。社殿を再建しようと、住民とビール醸造所がクラウドファンディング(CF)を始めた。

 ビール神社は、東北最大の河川・北上川が注ぐ追波湾の海岸から約250メートルの場所にある。正式名称は鹿嶋神社だが、集落の住民は親しみを込めて愛称の「ビール神社」と呼ぶ。米で造る日本酒でなく、麦が原料のビールをお供えする独特の習わしがあるからだ。

 由来となる言い伝えが残る。岸浪均宮司(70)によると、大昔、飢饉(ききん)でお神酒を作る米がなく、人々は麦で醸造したお酒を献納した。すると米がたくさんとれた。そこで、米のお酒を納めると、今度は不漁不作となり、疫病がはやったため、再び麦のお酒をお供えするようになったという。

 だが、14年前の東日本大震災で、最大14メートルの大津波が集落一帯をのみ込み、住民41世帯165人のうち、12人が亡くなった。17人は今も行方不明のまま。ビール神社の本殿や拝殿は小高い丘の上にあったが、基礎の一部以外全て流された。

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震災直後のビール神社=2011年4月24日午後0時36分、宮城県石巻市北上町十三浜白浜、写真家の清水哲朗さん撮影
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海側から見た震災直後のビール神社と白浜集落=2011年4月24日、宮城県石巻市北上町十三浜白浜、写真家の清水哲朗さん撮影

 市は民家が立ち並んでいた区…

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