静岡・伊豆の海水浴場から千葉・房総半島沖へ80キロ、夏の海を漂流した女性(21)が36時間後に救出された。11月には女性を発見した船員らが、海上保安庁側から異例となる2度目の表彰を受けた。奇跡の連続――。そう評される救出の内幕を関係者の証言でたどる。
「航海歴25年で漂流者に出会ったのは初めて。シーマンシップが起こした奇跡でした」。大型貨物船「ひまわり9」の猪田隆志船長(46)はそう振り返る。
「助けたい人が目の前にいたから」
7月10日午前7時半過ぎのことだ。船は北海道・釧路港から東京港へ向かっていた。房総半島南端の野島崎沖にさしかかったところで、船長は海上警戒を担当する木村将希さん(31)から報告を受けた。
「漂流物があって双眼鏡で見…