かつて人類を広大な海へ駆り立てたものはなんだったのだろう。ロマンか冒険心か、それとももっと現実的な生存戦略か。国立民族学博物館(大阪府吹田市)で開催中の特別展「舟と人類」には、未知の世界へ挑んだ先祖たちの情熱と英知が詰まっている。
およそ6万年前、私たちホモ・サピエンスは人類揺籃(ようらん)の地アフリカを後にし、遠大なグレートジャーニーに踏み出した。やがてユーラシア大陸の東端に到達した彼らの目の前には、見渡す限りの太平洋が立ちはだかっていたことだろう。しかし旅路はそこで終わらなかった。人類は舟を武器に、大海原へこぎ出す。
その舟はどんな素材、形態だったのか。ヒントは、本展を埋めるアジアやオセアニア海域世界の多彩な舟だ。
木材、竹、アシ、樹皮に動物…