大阪市を流れる淀川の河口域で、伝統的な漁法「石干見」を再現する取り組みが進められている。
水中に築いた石垣を使う漁で、イシヒビと読む。世界各地に古くからあり、「最古の漁具」と言われることもある。淀川の石干見は、単に魚を捕るのでなく、生物資源を豊かにし、水辺の文化を育んでいく狙いがあるという。どんな試みなのか、現地を訪ねた。
石を積み上げ、魚を囲う
大阪湾に注ぐ河口から4キロあまり上流、淀川大橋近くにある「海老江干潟」。6月下旬、市内の水族館・海遊館のスタッフと中高生ら、30人ほどが集まった。
「今日は二つの作業をします。石を積み上げて石干見をつくり、網で魚をつかまえます」
ちょうど干潮のピークが近づくタイミング。説明を受けて水辺に近づくと、干潟の泥が現れていた。その先の水面には、積み上げられた石の列が顔を出している。
この石垣が石干見だ。
沖に突き出すようにカーブを描いた半円形で、潮の高いときは沈んでいて、干潮になると水面が自然に囲まれる。その内側に取り残された魚を網などで捕らえる。
参加者はまず、石を積み増す作業に取りかかった。手ごろな石を見つけては次々に運び、30分ほどかけて積んでいく。埋まっている巨石を掘り出そうとするグループや、石の陰から現れたカニを追うグループも。だれもが真剣で楽しそうだ。
続いて、グループごとに2種類の網を手にし、水の中へと入った。泥に足をとられたり、水浸しになったりしながら、魚を追い込んでは網の中をのぞき込む。
「魚おった」「ハゼや」。あちこちから歓声が上がり、笑顔がこぼれた。
最後は全員参加の追い込み漁。石垣の中央部のすき間には、あらかじめ定置網が仕掛けてある。一列に並び、合図とともに石干見へと進んでいった。
引き揚げた網の中には、銀色に光る魚が何匹も見えた。この日、捕らえたのはマハゼ43匹、ニゴイ30匹、スズキ6匹など。数センチほどのサイズが目立った。
干潟のような浅い水域は、稚魚が大きな魚から逃れて育つための大切な場所だ。付近は淡水と海水が混ざり合い、様々な種類の生物がみられる。石干見のイベントは、その価値を体感してもらう狙いがある。
この日、より上流にみられるニゴイが多かったのは、雨で増水した影響とみられるという。モクズガニやシジミも、たくさん捕れた。
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実はこの試みは、淀川にあっ…