将棋は勝負事であり、江戸時代から続く文化でもある。伝統として継承されているのは、棋士がまとう和服。多くの棋士を顧客に持つ白瀧呉服店の5代目店主・白瀧佐太郎さん(50)の仕事は、晴れ舞台を静かに支えている。
棋士=和服。広く浸透した印象かもしれないが、棋士にとって和服は通常着ではない。極めて特別な意味を持つ。タイトル戦などの晴れ舞台に上がる一握りの強者のみが袖を通せる戦闘服であるからだ。夢見る者にとっては憧れの対象であり、到達した者にとっては誇りの象徴でもある。
藤井聡太名人、渡辺明九段、佐藤天彦九段、広瀬章人九段……。タイトル戦に登場する棋士の多くは白瀧呉服店(東京都練馬区)の着物、羽織、はかまをまとって盤の前に座ってきた。あつらえた棋士の和服は200着を超える。
2020年、17歳で初めて…