京都三大祭りの一つ、葵祭は源氏物語や枕草子にも描かれてきた。ヒロインの斎王代(さいおうだい)に今年は京都市左京区出身の東京芸大大学院生、山内彩さん(25)が選ばれた。「伝統をつなげていく責任をもち、務めさせていただきたい」と話す。
葵祭は上賀茂神社、下鴨神社の例祭で、正式には賀茂祭という。5月15日の路頭(ろとう)の儀では、斎王代をはじめとした行列が京都御所を出発。下鴨神社を経て上賀茂神社へ向かう約8キロを練り歩く。斎王代は十二単(ひとえ)姿で、腰輿(およよ)と呼ばれる輿(こし)に乗る。
葵祭行列保存会によると、斎王代は着物を着慣れた京都ゆかりの女性が選ばれる。山内さんは上賀茂神社であった会見に赤の振り袖姿で臨んだ。高井俊光宮司は「京都人らしい京都人。斎王代として申し分のない方」と述べた。
山内さんは、これまでの葵祭で童女役と采女(うねめ)役を務めた経験がある。「斎王代さんの袖を持たせていただき、上賀茂神社を歩いた記憶は大切な思い出」と振り返る。
邦楽を学び、地歌箏(そう)曲演奏家としても活躍するが、聴く音楽はジャンルを問わず、ヒップホップのライブにも行く。父は京都市中京区で不動産賃貸業などを手がける近庄ホールディングスの社長だ。
神社によると、葵祭は欽明天皇の時代(6世紀)にさかのぼるという。山内さんは「生まれ育った土地に脈々と受け継がれた伝統を未来につないでいけることを大変うれしく思っております」と話した。