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 「まだ溶けてないほうのワタリウム美術館」。そんな風変わりなタイトルの展覧会が、東京・神宮前のワタリウム美術館で開かれている。溶けたリンゴの彫刻などを手がけてきた雨宮庸介さん(1975年生まれ)の、都内美術館では初の個展。初期の立体から最新のVR作品まで、さまざまな角度からの作家の試みは、鑑賞者の認識を強く揺さぶる。

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溶けたリンゴの展示

 この世界は展示室に入る前と同じ世界なのだろうか。23分間のVR作品を見終えてゴーグルを外すとき、そんなことを思わずにいられなかった。

 仮想空間への没入がVRの醍醐(だいご)味だが、雨宮さんの今作はVRを体験する部屋と同じ部屋が舞台だ。ゴーグルをつけて左右を見ると、一緒に体験していた人の席は空席になっていて、目の前に作家が現れる。

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VR作品の体験会場。VRの中にもこの場所が登場する

 たたみかけられる言葉と図像。終盤には瞬間移動のような場面転換が続き、仮想と現実のはざまを漂うような気分のまま最後は元の部屋へと戻ってくる。

 ドローイング、彫刻、パフォーマンスなど、多岐にわたる作品を手がけてきた。VRは近年取り組んでいる表現手法で、過去にも展示会場を舞台にした作品を発表している。

 「VRで素晴らしい映像を見…

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