成年後見制度やヤングケアラーの問題について広く理解してもらおうと、愛知県大府市は、作画をプロの漫画家に依頼して物語形式の解説冊子を作っている。市の調査では、実際に家族の身の回りの世話をしている子どもたちが複数いることも明らかになった。市は「まず手に取って知ってもらいたい」としている。
最初に発行したのは2022年3月。認知症を患った女性の親族が成年後見制度について知り、利用するまでを描いた。A5判カラー刷り8ページで物語形式となっており、最後のページには同年に市が開所した成年後見センターや高齢者相談支援センターなどの連絡先を記した。
成年後見制度とは、認知症や知的障害などで判断能力が十分でない人に財産管理や契約の手続き、福祉サービスの利用を支援する。内容が難しく、一般での認知度が低いため、漫画の解説冊子を用意することにした。
以後は、同制度の書籍を原作にしてシリーズ化。2作目が「妹夫婦の陰謀」(23年3月、8ページ)、3作目が「ギャンブル依存症の男」(24年3月、12ページ)と続く。ともに主人公にトラブルが起きたものの、制度を利用して解決に向かう流れが分かりやすく描かれている。
作画を担当したのは、漫画家の棚園正一さん(41)=大府市在住。自らの不登校の経験をもとにした「学校へ行けない僕と9人の先生」(双葉社)などの作品がある。市職員が考えたあらすじに基づき、作画した。
冊子は病院や金融機関などに置いた。市福祉総合相談室の担当者によると、成年後見センターを訪れた人の中には「この冊子を読んで興味が出たので」と答えた人もいたという。26年度まで毎年1冊ずつ出す予定だ。
漫画だと「当事者に手に取ってもらいやすい」
一方、ヤングケアラーの冊子は23年3月、24年3月に発行(ともにA5判カラー刷り、8ページ)。
冊子では、主人公の女生徒が相談先を知り、置かれた状況を変えようとしていくまでを描いている。
ヤングケアラーとは、大人が担う家事や家族の世話を担っている子どもたちのことで、孤立しがちな当事者への支援の必要性が叫ばれている。
市福祉総合相談室の担当者は「子どもの思いを表現したあらすじを作る難しさはあるが、漫画だと当事者に手に取ってもらいやすい。『分かりやすい』という声もいただいている」と話す。1作目は小学生から高校生に、2作目は高校生に無料配布した。来年にも3作目を出す予定だ。
棚園さんは「読み物としてラストに向け、盛り上がるよう工夫している。こうした漫画を通じて目を向け、考えるきっかけになればうれしい」と話した。
市では、このほか今年度中に…