参院選の立候補予定者が有権者と握手をするそばで、陣営スタッフが「SNSで拡散OK!」と書かれた看板を掲げていた=2025年5月25日、神戸市中央区、有元愛美子撮影

 斎藤元彦知事をめぐる内部告発問題で揺れる兵庫県が、今夏の参院選で激戦区になりそうだ。改選数3に対し、主要各党の候補ら12人が出馬を予定。斎藤知事をめぐる問題はどう影響するのか。

 参院選兵庫選挙区は、改選数が2から3になった2016年以降、3回続けて、自民党、公明党、日本維新の会(16年はおおさか維新の会)が1議席ずつ分け合ってきた。

 そこに今回、テレビのコメンテーターなどを務め、知名度の高い前明石市長の泉房穂氏(61)が立候補を表明。立憲民主党県連が推薦する。3月24日に立候補会見を開くと、4月末までに県内全41市町を回り、郡部でも街頭演説に人が集まったという。

参院選兵庫選挙区の候補者

 国民民主党と立憲民主の両県連は当初、支持母体の連合兵庫とともに泉氏を支援する方針だった。だが、泉氏は立候補会見で無所属で立つ理由を問われ、「魅力的な政党がない」と説明。全国で独自候補の擁立を模索していた国民民主は、泉氏の発言を党幹部が問題視し、一転して元経済産業省職員で新顔の多田ひとみ氏(45)の擁立を決めた。4月20日の出馬会見には玉木雄一郎代表が同席し、「自民でも維新でもない新しい選択肢としての国民民主党の旗を立てたい」と力を込めた。若者を中心とした支持率の高さを追い風に、主に都市部での得票を狙う。

維自公の3議席どうなる

 兵庫選挙区で直近2回連続トップ当選した維新は、今回厳しい戦いだ。

 改選を迎えるはずだった元アナウンサーの清水貴之氏は、昨秋の知事選に出て惨敗。今回の参院選は体調不良を理由に辞退した。そのため維新は公募に応じた新顔の元三菱商事社員、吉平敏孝氏(44)の擁立を決めた。吉平氏は「知名度ゼロからのスタート」と話す。

 内部告発問題と知事選で、維新の県組織はまとまりを失った。政治団体「NHK党」党首の立花孝志氏(57)に非公開の音声データを渡したなどとして県議3人が処分され、離党して地域政党「躍動の会」を結成した。ある国会議員は「何とか3番手に食い込めたらいいが、このままでは難しい」と率直に語る。

 政権与党の2人も苦しむ。自民の加田裕之氏(55)と公明の高橋光男氏(48)はいずれも現職で再選をめざすが、自民の派閥裏金問題の影響などが懸念される。

 公明は昨年の衆院選で、裏金問題に関与したことで自民が公認を見送った候補に、推薦を出した。結果的に公明は公示前から議席を8減らし、石井啓一代表(当時)も落選した。今回の参院選でも裏金に関与した自民の立候補予定者3人の推薦を決め、党内や支持者から批判が上がっている。

 自民の加田氏は旧安倍派。政治資金パーティーをめぐる政治資金収支報告書への不記載で、党から処分された。自民県連関係者は「厳しい選挙になる」と口をそろえる。

 公明県議は「加田さんも厳しい立場にある。自公で2議席取る前提で臨むが、どれだけ応援し合えるか見えない」と懸念する。公明にとって兵庫は「常勝関西」の一角だが、支持母体・創価学会の高齢化もあり、関係者は危機感を募らせる。

 共産党、れいわ新選組、社民党、参政党も新顔の独自候補を立て、比例票の上積みも狙う。

参院選兵庫選挙区の立候補予定者

加田 裕之 55 自現① 〈元〉法務政務官

高橋 光男 48 公現① 〈元〉農水政務官

吉平 敏孝 44 維新  〈元〉三菱商事社員

金田 峰生 59 共新  〈元〉県議

多田ひとみ 45 国新  〈元〉経産省職員

米村 明美 65 れ新  〈元〉ユネスコ職員

来住 文男 65 社新  〈元〉JR東海社員

藤原 誠也 37 参新  建築士事務所長

立花 孝志 57 諸元① NHK党首

高橋 秀彰 42 諸新  農業

永安 祐子 64 諸新  多夫多妻党首

泉  房穂 61 無新  〈元〉明石市長

 ※敬称略。丸数字は当選回数。並び順は参院の勢力順に従い、自民党(自)、立憲民主党(立)、公明党(公)、日本維新の会(維)、共産党(共)、国民民主党(国)、れいわ新選組(れ)、社民党(社)、参政党(参)、諸派(諸)、無所属(無)とした。肩書の〈元〉は過去の役職や職業。

定例会見に臨む兵庫県の斎藤元彦知事=2025年5月28日午後3時1分、神戸市中央区、田辺拓也撮影

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