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 熊本県阿蘇市の阿蘇神社で28日、御田植神幸式(おたうえしんこうしき)(通称・御田祭(おんだまつり))があった。国重要無形民俗文化財「阿蘇の農耕祭事」の一つで、神輿(みこし)にのせた12の祭神に稲の育ち具合を見てもらい、豊作を祈願する。神々の食事を運ぶ宇奈利(うなり)と呼ばれる白装束の女性ら約200人からなる行列が、地元の人たちが待つ街を練り歩いた。

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御田祭で阿蘇神社を出発する白装束の女性たち。神々の食事を運ぶ役目で「宇奈利」と呼ばれる=2025年7月28日午前11時34分、熊本県阿蘇市一の宮町宮地、城戸康秀撮影

 途中の休憩所や神社の境内では、神輿に青い稲を投げかける「苗投げ」もあった。神輿の屋根に多くのればその年は豊作になるとされ、観光客らも加わって、四方八方から稲が飛び交った。

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神輿に向かって次々に投げられる稲。泥が丁寧に落とされているため、投げる人の手や神輿が汚れることはない=2025年7月28日午後0時53分、熊本県阿蘇市一の宮町宮地、城戸康秀撮影

神事支える「唯一無二の存在」

 阿蘇神社の神職らが「神社の宝」と表現する男性がいる。氏子会の前会長、小代(しょうだい)勝久さん(90)。楼門や拝殿を飾る大しめ縄、火振り神事の茅(かや)束、茅(ち)の輪……。いずれも「小代さん抜きには難しい」という。

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すべて1人でやってきた「苗とり」作業を若者が手伝ってくれるようになり「だいぶ楽になった」と笑う、小代勝久さん=2025年7月27日午前9時33分、熊本県阿蘇市一の宮町宮地、城戸康秀撮影

 28日にあった神社最大の年中行事、御田祭。豊作を祈って4基の神輿に投げかけられた稲も、小代さんが「我が子のように育てた」ものだ。

 長さ約80センチの青い稲が…

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