東大の学部生の女性比率は2023年で20・96%。今年、「なぜ東大は男だらけなのか」(集英社新書)を出した、東大副学長の矢口祐人さん(57)は「このままでは東大に未来はない」と危機感を募らせます。話を聞きました。
――東大合格者に占める女性の割合は24年度入試で20・6%。序章の最初の見出しには「男の大学」とあります。
12年から留学生と関わる仕事をする中で、「東大のジェンダー構造はありえない」といった声や、東大の女性学生が入れないサークルの存在に「東大が女性差別を認める大学だとは聞いていない」と憤る声を聞きました。「そうしたもの」としていた自分自身を大いに反省し、まず数字を調べました。
学生の男女比はここ20年ほど「8:2」。女性教授職は22年時点で1割に届かず、任期付きポストで職位が低いほど女性が多いことも分かりました。
歴史をたどり、構内の建物の設計者や銅像も調べました。東大広報誌で18年に紹介された銅像19体は全て男性、犬の像もオスでした。
東大の多数派「私学」「中高一貫の男子校」「大都市圏」
――「男性」の中の均質性も、議論の俎上(そじょう)にあげています。
学校基本調査によると、男子校は全高校の約2%です。一方、東大合格者数上位20校のうち10校が男子校かつ中高一貫校で、うち9校が大都市圏にある私学。学校公表の合格実績などから計算したところ、この10校で全合格者の4分の1を占めていました。
中高も大学も、クラスの同級生は男だけ、教員も男性ばかりということが、東大では起こり得るのです。
――同質性が高い集団はイノベーションが生まれにくいとの研究が様々な分野で多くあります。学問の場として、男女比がいびつであることをどう考えますか?
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そもそも大学は男性のために…