自主練習をする石川県珠洲市の緑丘中学校の吹奏楽部=2024年7月9日、波絵理子撮影

 「戻るまで自主練!」

 21日の石川県吹奏楽コンクール出場を約2週間後に控えた珠洲市立緑丘中の音楽室。吹奏楽部顧問の中谷百(ひゃく)教諭(25)が、急用で教室を後にする。

 部員たちは早速、先輩からアドバイスを受けたり、ソロパートを演奏する数人が場所を移動したりして練習し始めた。部活後、中谷教諭は「生徒たちのモチベーションは今、過去一に上がっています」と話す。

 だが、新年度に部活動が始まった当初、部員には諦めの空気が漂っていたという。

学校の体育館は今も避難所として使われており、外には仮設トイレが設置されている=2024年7月9日、波絵理子撮影

 元日に発生した能登半島地震の影響で、3月までは教職員と生徒が金沢市に避難し共同生活を送る「集団避難」があり、部活が再開できたのは4月下旬からだった。

 「他の学校はもう仕上げてる」「どうせ出てもうまくいかないし」「周りから『地震があったから仕上がってない』って言われるの嫌やし」

 仮設住宅で過ごす部員や精神面で課題を抱える部員もいた。

難易度の高い「海の曲」

自主練習中、部員同士でアドバイスする姿もあった=2024年7月9日、波絵理子撮影

 例年、3年生はコンクールに出場後、学校で演奏会を開いて引退する。中谷教諭らは部員と話し合いを重ねた。モチベーションが低いまま、お世話になった方に感謝を伝えられるのか。達成感が得られるのはどういう状況なのか。

 中谷教諭は「めざせ金賞と思…

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