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救急救命学科ではさっそく実習が始まった=岐阜県瑞穂市の朝日大
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 人はどこでも倒れうる。交通事故や火災に巻き込まれることもある。その現場で救命処置に当たる「救急救命士」を育成する学科を、朝日大(岐阜県瑞穂市)が設置した。今年度、初の入学生45人(男性35人、女性10人)を迎えた。目指すのは、医師に匹敵する知識と技術を持つ人材の輩出だ。

 4月中旬、朝日大の実習室で、救急救命学科の学生たちが人形を相手に、胸骨圧迫と人工呼吸を続けていた。胸骨圧迫は、両手を重ね合わせて胸を押し込み、全身に血液を送る。アプリを使うことで、手元のスマホに押し込んだ状況が示される。「押し込むのは5~6センチ。体に覚え込ませるんです」と沢田仁・特命准教授は言う。

 救急救命士は国家資格。傷病者がいる現場で気道の確保や心臓機能の回復などの対応を担う。消防署の救急隊のほか、海上保安庁や自衛隊、警備会社などに7万人以上いるという。

 学科で入学後すぐに実習を始めるのは、学生のうちから、目の前で誰かが倒れたら対応できるようにしたいとの思いがある。

 救急救命士の養成を急ぐ背景には、全国的な救急出動件数の増加がある。総務省消防庁のまとめでは、2003年は483万件だったが、23年には764万件と6割近く増えた。急病による搬送が増えているという。

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 救急救命学科長に就いた小倉真治教授は、岐阜大病院で救急治療に携わってきた。「学科の設置は全国で8番目。教員に、現場を知る救急救命士、救急医を質量ともに集めることができた」と胸を張る。

 傷病者がいる現場に医師が向かうドクターヘリやドクターカーの取り組みが広がっているものの、「全体の数からすれば一部」。いち早く現場で処置を始める救急救命士の役割は重要だという。

 4年後、初の卒業生が現場に出る。「倒れている人の何が問題なのか、医師に匹敵するくらい推理できる力を付けさせたい」

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