琵琶湖の伝統漁法「えり漁」で水揚げされたアユの稚魚=2025年6月13日午前5時35分、大津市本堅田2丁目の堅田漁港、四倉幹木撮影

 味が良く、釣りのターゲットとしても人気がある琵琶湖産のアユが記録的な不漁に陥っている。今季の漁獲は、やはり不漁だった昨年同時期の半分程度、ピークの6%ほどと見込まれる。温暖化やエサ不足が原因とみられ、漁師や養殖業者、放流先の漁協などが危機感を募らせている。

漁師歴60年「こんなに少ないのは初めて」

 6月中旬の午前5時半前。琵琶湖の西岸にある堅田漁港(大津市)に、水をたたえた四角い容器を載せた漁船が帰ってきた。小型の定置網で魚を捕る琵琶湖の伝統漁法「エリ漁」の漁船だ。船着き場に横付けし、容器からアユの稚魚をすくって、トラックの大きな水槽へ生きたまま移す。

 午前2時に漁を始めたアユ漁師の今井政治(まさじ)さん(76)のこの日の水揚げは40キロとまずまずだったが、今年の水揚げは例年の2割ほどだという。「60年以上続けているが、こんなに少ないのは初めて」

 近年、アユの代わりに網に多く入るようになったのはワカサギだ。だが、アユは1キロ当たり2300円で売れるのに対し、ワカサギは300~400円だという。「増えたワカサギにエサを奪われ、アユが減ってるんやないか。網に付くごみも昔より多くなった」。今井さんは、長年過ごす琵琶湖の変化を感じている。

高水温とエサ不足が原因か

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 滋賀県によると、琵琶湖での漁獲量のうちアユが最も多い4~5割を占める。漁は毎年12月に解禁。5月ごろにピークを迎え、8月に終わる。

 だが今季は「前代未聞の不漁」(滋賀県漁連の佐野高典会長)だ。県漁連によると、漁獲量(12月~翌年5月)が10年前は77・6トンだったが、今季は17・6トンにとどまる。昨季(33・1トン)の半分ほどだ。国の統計によると、2023年(1~12月)の漁獲量は51トンで、ピークだった1987年の812トンの6%程度に激減した。

 県は原因として高水温とエサ不足を挙げる。産卵期の秋、川の水温が産卵に適した20度まで下がらなかったことなどで、産卵量が平年の半分程度だった。またエサとなるプランクトンが湖内で少なくなり、アユが育ちにくかったという。

「養殖業者はどこも厳しい」

 不漁の影響はアユの加工品や放流先にも及んでいる。

 琵琶湖で育つアユは体長10…

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