再発防止策案について、4人の有識者に岡山県教委の担当者ら(中央の奥側)が説明した=岡山市北区

 岡山県立岡山操山高校の野球部マネジャーだった2年生の男子生徒(当時16)が2012年、監督の激しい叱責(しっせき)が原因で自殺した問題で、県教育委員会は再発防止策の案を取りまとめ、20日に外部有識者に説明した。児童生徒の自殺が起きた場合、3日以内に当該学校の全教職員から聞き取りを実施するなど、初期対応について明確化している。

 この問題をめぐっては、第三者委員会が21年3月、監督の言動が原因だったと結論づける報告書を公表。22年3月に県教委が正式に謝罪した。23年3月に今回の再発防止策のもととなる「方向性」を打ち出している。

 再発防止策は「児童生徒の自殺防止対策基本方針」が柱。「自殺防止対策」と「起きてしまったときの対応」の計2編からなる。

 第1編では「自殺のサイン」として、投げやりな態度が目立つ、過度に危険な行為に及ぶなどの22の行動を例示。これらから自殺の危険が高まっていると察したら「TALKの原則」が有効だと説明する。

 Tell(言葉で伝える)▽Ask(尋ねる)▽Listen(傾聴する)▽Keep safe(安全を確保する)。子どもを叱らず、寄り添い、1人にしないことが重要とした。また教員1人に抱え込ませず、保護者や医療機関などと連携して組織的な対応で安全を確保するとしている。

 第2編は発生から3日以内に学校がすべき対応を示した。遺族には速やかに調査の実施時期や方法といった調査の全体像を説明。学校が当該校の全教職員と、亡くなった子と関係が深かった子に聞き取りを実施する。自殺の原因の疑いがある教職員は調査から外すとする。

 聞き取りの経過は、調査着手からできるだけ1週間以内に遺族に説明する。結果をふまえ、必要ならば外部有識者による詳細な調査に移る。

 教職員の懲戒処分の指針も改定。新たにパワハラに関しての項目を設け、子どもの心身に苦痛を与えた場合は停職や減給などとする。特に悪質な場合は免職とした。

 案には遺族から意見が寄せられているが、まだ反映されていない。県教委は外部有識者4人の意見もふまえて案を完成させ、6月からの実施を目指す。

 この日は有識者4人全員が出席。国の学校事故対応に関する指針の作成に関わった京都精華大の住友剛専任教授(教育学)は「こうしたマニュアルは職員室に眠ったまま読まれないことが多い。いかに先生に読んでもらうかが第一段階」と注文。精神科医の田中究氏は、再発防止策の効果を検証するための児童生徒へのアンケートについて「子どもたちが担任に話せないことはたくさんある」と指摘し、回収は担任以外がすべきだとの考えを示した。

 会合は公開で進められ、会場は約20人の傍聴者で埋まった。男子生徒の遺族も傍聴した。生徒の父親は「私どもの意見が外部有識者に説明され、一般の方にも公開されたことは大きな前進。より多くの方に関心を持ってもらい、有識者の公正中立な意見をいただき、実効性のある策の迅速な策定を願う」と話した。(小沢邦男)

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