第106回全国高校野球選手権大阪大会が7月6日に開幕する。一戦必勝、一球入魂、チーム1の守備力……。取材をしていると、球児たちが「イチ」を大事にしているところをよく見聞きする。「イチ」にかける選手たちを追った。
■東大阪大柏原・冨田賢悟選手(3年)
バットは引かない。どんなに速い球でも、右手でボールをつかむような感覚で前に置く。動かすのはひざだけ。
コンッ。
快音は響かない。打球は目の前に転がる。
バントは地味だ。でも東大阪大柏原の冨田賢悟選手(3年)は、走者を前に進める「犠牲バント」に全てを懸けている。
今では79人いるチームの中で、努力家のメンバーの一人として名前が挙がる。
昨春までは真逆だった。
中学時代はレギュラー。だけど高校に入ると、周りの同級生たちは、体格も、打球の強さも、送球の強さも、どれをとっても自分とはレベルが違うと感じた。
ひたすら走り続けた1年の冬。肩で息をしながら、気付いてしまった。
「自分、センスないな」
素振りやティーバッティングで、手を抜くようになった。
「お前、ちゃんとやれよ」「腐るには早すぎんか、もうちょっと頑張れば?」
そう声をかけられても、気の抜けた返事をした。
春になった。土井健大監督に呼ばれ、「何がしたいねん」と問いただされた。
どれだけ頑張っても、結果が…