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若者の恋愛や性行動などについて研究する弘前大の羽渕一代教授(社会学)=本人提供

 生成AI(人工知能)に恋愛感情を抱く人は、SNS上でも大勢確認できます。実体のない対象に恋をすることは、人間同士の関係とどう違うのか。若者の恋愛と性行動について研究する弘前大の羽渕一代教授(社会学)に聞きました。(聞き手・御船紗子)

 ――米オープンAIのChatGPT(チャットGPT)やXのGrok(グロック)など、生成AIが急速に私たちの生活に普及したことで、生成AIと恋愛を楽しむ人が出てきました。

 人間ではない存在との恋愛は、ギリシャ神話の昔から語られてきたことで、それ自体は新しいことではありません。

 生成AIとの恋愛については一概には言えないものの、精神分析学の一派である対象関係学派などの知識を借りれば、「幼児的な万能感」を味わう側面があると考えられます。

 人間との恋愛は我慢も必要で、傷つけ合うことやうまくいかないこともある。対して、生成AIはプロンプト(命令)を打ち込めば自分が望む言葉をくれ、こちらを傷つけることもない。赤ちゃんが泣けば、保護者が勝手におむつを替えてくれ、あやしてくれる、あの「万能感」と同じものを経験しているのです。

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2次元との恋愛「経験ある」若者が増加

 ――実体がない相手にここまで情熱を注げるのは、なぜでしょうか。

 若者の恋愛の多様性が可視化されてきたことの一環で、実体のない相手への情熱が恋愛感情のように感じられている、という見方ができます。

 人間は情熱をどんな対象にでも抱くことができるため、生身の人間ではないものに夢中になることはこれまでも観察されてきました。メディア文化の成熟により、生身の人間を対象としない情熱も社会的に受容されると感じられるようになり、マイノリティーの情熱の持ち方が社会の中でも表現されるようになった、と説明できると思います。

 1990年代から現在にかけて2次元的なアニメやコミック、ゲームなどの文化は社会にじっくりと浸透してきました。中高生に対して「ゲームやアニメの登場人物に恋愛感情を持つ」かを調査したところ、2017年より23年の結果の方が2次元恋愛を経験したと答える人は増えています。

 男子より女子の方が、思春期…

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