大阪教育大付属池田中学校の2年生の英語では、英作文の内容を深めるため生成AIを活用していた=2025年6月18日午後0時20分、大阪府池田市緑丘1丁目、松浦祥子撮影

 生成AIを学習に使うと子どもの考える力が低下するのでは――。日々進化する生成AIに家庭や学校は、どう向き合えば良いのでしょうか。教員経験があり、教育現場での生成AIの活用に詳しい信州大の佐藤和紀准教授(教育工学)に「これに尽きる」というアドバイスを聞きました。

「植民地」とだけ入力する生徒も 「壁打ち」が重要

 ――教育現場の現状はどうなっているのでしょうか。

 文科省が2023年度から指定を始めた「生成AIパイロット校」が、24年度は公立の小・中・高校あわせて全国に66校あり、授業での実践的な活用が進んでいます。しかしそれ以外の学校では、先生の意識によってばらつきがあり、ほとんど活用していない学校も多いのが現状です。

 しかし、対話型AIの先駆けであるチャットGPTの年齢制限は13歳以上。これくらいの年齢から個人で使い始める子どもも出てくる。このため、中学校からは実際に授業などで使いながら、正しい向き合い方を教えることが良いと思います。一部のサービスで年齢制限の引き下げ議論があることも踏まえると、小学校高学年ごろからは生成AIの存在や特性などを教える必要があるでしょう。

 ――生成AIを学習や授業に使うことで、考える力が低下するのではないでしょうか。

 まだ考える力が発達していない子どもが使う際には、教員や保護者の教育的配慮は必要です。そもそもAIをうまく使いこなすためには、課題の意図を正しく理解し、効果的なプロンプト(対話型AIへの問い)を投げかける必要があります。何を目的に、どんな回答を求めているのかというイメージがないままだと、安易に「答え」を求める方向に流れてしまいます。

 植民地の歴史について学ぶ中学校の授業を視察した際、対話型AIを使う場面があったのですが、「植民地」とだけ入力している子どもがいました。これでは、単なるネット検索と変わらず、考える力は育ちません。

 最適な回答を得るには、対話型AIに対し、色々な角度から質問を投げかける「壁打ち」と呼ばれる基本的動作が必要です。そして、こうした的確な質問ができるようになるには、ある程度の知識と、その知識を使って考えることが必要になる。

 考える力や質問する力を育てるためには、子どもが生成AIを使う前に、まず自分の知っていることについて他の人との話し合いを促したり、「自分で考えないと、うまいプロンプトも出せないよ」と声かけをしたりする先生や親の役割が不可欠でしょう。

 授業でも、工夫が必要です…

共有
Exit mobile version