5日に開幕した第107回全国高校野球選手権大会に、北海道高野連から初めて公式記録員が派遣される。旭川東高の元監督、佐藤俊行さん(46)。「責任は重大だが、とても名誉なこと。記録員の代表として、ミスをしないよう臨みたい」と意気込んでいる。
記録員の派遣は、第106回大会から始まった。公式記録員は主催の朝日新聞社が務めてきたが、各都道府県高野連の派遣記録員も、日程の一部を担う。
公式記録員として、安打や失策、暴投や捕逸などの判定をしたり、パソコンを使って、電子スコアを作成したりする。佐藤さんは大会第9日~12日を担当する。
高校野球では近年、公式記録の作成に電子スコアソフトを導入し、普及している。電子スコアは第100回大会(2018年)を機に、開発され、北海道でも2017年からソフトが行き渡った。
道高野連で記録委員会に所属する佐藤さんは、手書きにくらべ、記入や集計が楽で、記入者の癖がなく見やすいという電子スコアの利便性を実感した。「記入のために下を向いている時間が大幅に減り、目の前のプレーに集中できる」。以来、普及の中心的な役割を果たしてきた。
公式記録員として判断の質を高めたり、電子スコアを普及させたりするため、続けてきたことがある。
春と夏の甲子園の全試合を録画。判断が難しい場面を選び抜き、記録員たちで見て、判断力を磨いている。
甲子園にも、ひときわ思い入れがある。そこには指導者として転機になった出会いがあった。
2011年11月、羽幌高の監督だったとき、指導者を対象とする甲子園塾に派遣された。特別講師は、その夏、日大三を優勝に導いた小倉全由さんだった。「1年生を迎えたとき、(卒業まで甲子園に出場機会がある)全5回のうち、何度甲子園に連れて行けるかを考え、指導している」。名将の熱意に圧倒された。
旭川凌雲高(現・旭川永嶺)では主将だったが、甲子園出場は夢のまた夢。小倉さんの教えを胸に、部員たちに、本気になって甲子園出場をめざすことを伝えた。次の赴任先の旭川東で、目標達成に迫った。
第104回大会(2022年)で北北海道大会決勝に53年ぶりに進んだ。旭川東として通算11回目の決勝。旭川大(現・旭川志峯)に敗れ、初出場は逃したが、旋風を起こした。
そして今夏、あこがれた聖地を、ネット裏の公式記録員席から見渡す。「視野を広く持ち、落ち着いてジャッジしたい」