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 天皇陛下をはじめ、皇族方の活動や皇室に関連する出来事を過去にさかのぼって紹介する「皇室365」を始めました。皇室のあり方が問われる中、公務や宮中行事などのトピックを毎週、担当記者が詳しく読み解きます。

7月20日(2017年) 皇太子さま(当時)が水問題をテーマにビデオ講演

 2017年のこの日、米ニューヨークの国連本部で開かれた「水と災害に関する特別会合」で、皇太子時代の天皇陛下がビデオによる基調講演をした。陛下は治水や利水などの「水」問題の研究がライフワークで、国内外で水関連の施設を視察に訪れてきた。研究の原点には、外国訪問先で目にした光景がある。

 1987年3月、陛下がネパールの中部都市ポカラを訪れた。当時27歳。ヒマラヤの眺望を見渡せるサランコットの丘付近にあった水くみ場の前で、甕(かめ)を手にした女性や子どもたちが列をなしていた。水が容易には手に入らない環境。遠方から水を求めて次々に集まってくるが、水は細々としか流れ出ていない。

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第1回アジア・太平洋水サミット開会式でオランダのウィレム・アレキサンダー皇太子と握手する皇太子さま(いずれも当時)=2007年12月、大分県別府市のビーコンプラザ

 「水くみをするのにいったいどのくらいの時間が掛かるのだろうか。女性や子どもが多いな。本当に大変だな」。陛下はそんな感想をいだき、その光景に自らカメラを向けた。

 開発途上国では女性や子どもたちが水くみに時間をとられ、地位向上や学校に行くことを阻まれていること。地球温暖化の問題は水循環への影響を通じ、生態系や人間社会に多大な影響を及ぼしていること――。異国で目にした光景を機に、陛下はそうした現状を知り、水問題への関心を深めていったと、のちに自身の講演(2007年12月の第1回アジア・太平洋水サミット開会式、「人と水―日本からアジア太平洋地域へ―」と題した記念講演)で明かした。

 「私の場合は水の問題などをライフワークとしていこうと思っているのですけれども、ライフワークが一つあるということは、これはほかの公務などをやる場合でも大変励みになるものだと思うのです」

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「第8回世界水フォーラム」で基調講演する皇太子時代の天皇陛下=2018年3月、ブラジリア

 陛下は2009年の会見で、水研究を「ライフワーク」と表現。別の会見では、新しい時代の天皇のあり方として「時代に即した公務」に言及し、その柱の一つとして水問題への取り組みをあげた。

 宮内庁関係者によると、住まいの御所には、水関連の専門書や資料が大量に保管され、新たな収集や整理も自身で担っているという。

 陛下は水問題の解決を「貧困…

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