買い取り品も並ぶ=2024年6月6日、神奈川県横須賀市、具志堅直撮影

 店のシャッターはこじ開けられ、ショーケースを壊されて数百点の宝石類をごそっと盗まれた。被害額は1千万円以上――。

 運転資金さえ事欠く事態に、店を営む倉茂紀夫さん(80)はぼうぜん自失。しかし、折れた心を奮い立たせたのは、宝飾品を作る「飾り職」として培ってきた己の技術への自信だった。

 神奈川県横須賀市中心部の老舗の三笠ビル商店街にある「クラシゲ宝飾」は、貴金属の買い取りや修理・加工、オリジナルジュエリーの販売をする人気店だ。

 4人きょうだいの末っ子で、高校卒業後に飾り職人の父の下で仕事を覚え、兄が営む宝石店で職人として技術を磨いた。

 24歳で自分の工房を構え、30年ほど前に現在の店に移転した。空き巣被害にあったのはその2年後。念願の横須賀の目抜き通りに店を持つことができ、順風満帆と思った矢先の出来事だった。

 仕入れもままならず、廃業の危機。やる気を喪失した。

現実逃避の旅で考えたことは

 そんなとき、母親から少しば…

共有
Exit mobile version