「こんな日が来るとは思ってもいなかった」
1月13日、元バレーボール日本代表の益子直美さん(58)は「監督が怒ってはいけない大会」の閉会式でそう振り返った。小学生バレーボールの大会として福岡県宗像(むなかた)市で始まり、今年で10回目を迎えた。
今大会で優勝した男子の幸袋(こうぶくろ)ジュニア(福岡県飯塚市)は、昨夏の全国大会で優勝。この日も監督の堀田祐司さん(51)は試合中、冷静に指示を出し続ける一方、子どもたちはガッツポーズや笑顔で喜びを表現し、試合の合間には客席の保護者たちと踊った。全国大会決勝の舞台でも、監督の指示は「ミスしたら踊れ」だった。
約10年前から指導する堀田さんの競技経験は中学の部活だけ。この大会に初期から参加し、できないことを怒るのではなくチャレンジしたことをほめる指導法を磨いてきた。
誰よりも練習場に早く着き、準備する。「選手の顔色、目、表情をしっかり見て、一人ひとりの性格に合わせて指導しています」
全国制覇を果たした直後、堀田さんは大会関係者にLINEを送った。
「怒らなくても勝てました」
夫妻との出会い、断ち切った「負の連鎖」
大会のきっかけは、益子さんと元実業団選手の北川美陽子(みよこ)さん(56)、新二さん(54)夫妻=福岡県福津市=の出会いだった。北川さん夫妻は2009年の夏、バレーボールが大好きだった9歳の長男・竜匠(りょうた)さんと6歳の長女・美海(みうみ)さんを水難事故で亡くした。
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