「国内株式約定のお知らせ」――。東京都内の会社員男性(61)は4月30日の昼過ぎ、iPadで証券口座サイトを眺めていて、目が点になった。証券会社から突然、株の売買成立を示す「お知らせ」が続々届いた。

 口座は妻名義だが、自宅に一緒にいた妻が取引した様子はない。「株が売られてるぞ!」。思わず叫んだ。

妻名義の証券口座が乗っ取り被害に遭った会社員男性は「投資企業の成長を楽しみにしていたのに」と話す=東京都内、堀篭俊材撮影

 医療機器メーカーや精密機器メーカーなど、保有する国内株が次々と売られていった。数年前からコツコツ投資してきた株で、新NISA(少額投資非課税制度)口座の8銘柄も含まれていた。

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 一方で、全く知らない株に大量の買い注文が出された。家電の通販サイト、焼き鳥屋チェーン、創薬ベンチャー……。株価は40~110円ほどで、普段は売買も少ない株だった。

 「虎の子」の株式が、目の前で超安値の「ボロ株」に姿を変えていった。

 妻に話を聞くと、先ほど「証…

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