(25日、第107回全国高校野球選手権茨城大会準決勝、霞ケ浦2―7明秀日立)
「もう一度甲子園に行く」
八回裏、5点差をつけられても、霞ケ浦の捕手の片見優太朗(3年)はその思いを支えに、マスクの中の笑顔を絶やさなかった。
昨夏の甲子園。エースの市村才樹(3年)とともにバッテリーを組み、2年生ながら強豪・智弁和歌山から勝ち星を挙げた。
「球場いっぱいに響き渡るように歌った校歌は最高だった」
だが昨秋、代替わりした新チームは最初の公式戦からつまずいた。秋の県大会地区予選で初戦敗退。幸い、秋の地区予選は敗者復活の仕組みがあり、最後は県大会で準優勝したが「捕手としての力不足を感じた」。
「もっと配球を勉強しろ」。高橋祐二監督からも厳しい言葉をかけられた。「(智弁和歌山を遅球で翻弄(ほんろう)した)市村にとって、本当にふさわしい『相棒』になる」と、胸に誓った。
それまで配球は高橋監督の指示頼みだったが、練習や練習試合で使った配球はすべてメモするようにした。
市村の最大の武器は40キロの速度差がある緩急を使った投球術。それを対戦打者にどういかすか。野球部寮で同室の市村とは、何度も議論した。
その成果はこの夏、実った。3回戦の下妻一との対戦では、市村と2人で無安打無得点試合を成し遂げた。「配球はお前たち2人にもう任せた」。そう高橋監督からも太鼓判を押された。手応えとともに、夏の連続優勝が見えてきた。
この日の準決勝。先発の1年生投手が調子を崩し、二回までに4点のリードを許した。継投した市村をリードし、緩急をつけた投球を見せたが、勢いを抑え込むことはできなかった。
試合後、「悔いはあります」とうつむいた。
ただ、こうも言った。「市村と2人でこの夏をやり切れたことは誇りです」。目を赤くしながらも胸を張った。