江差高等看護学院=2021年4月、北海道江差町

 北海道立江差高等看護学院(江差町)で教員からパワーハラスメントを受けた男子学生が2019年に自死した問題で、北海道による遺族への謝罪が自死との因果関係を認めたものではないことがわかった。道の代理人弁護士が4月26日付で、遺族側代理人の植松直弁護士に書面で回答した。道側は、自死に対する損害賠償には応じておらず、対立が深まっている。

 道が委嘱した弁護士2人と大学教授からなる第三者調査委員会が昨年3月に報告書をまとめ、複数の教員によるパワハラ行為を認定。賠償責任を負う「相当因果関係」があると結論づけた。相当因果関係は原因となる行為から損害が生じるのが通常である場合か、損害の発生が予測可能な場合に認められる。

 これを受け昨年5月、保健福祉部地域医療推進局長(当時)が遺族に会って謝罪。だが、道側はパワハラによる精神的苦痛に対する賠償には応じるとする一方で、自死に対する賠償を拒み続けているため、植松弁護士が「何に対する謝罪であったのか」を明らかにするよう求めていた。

 道側は今回の回答書で、謝罪の対象について、第三者委が認定したパワハラ行為を挙げたほか、「教員全体が、学生を育てるよりも振るい落とすような教育方針ないし態度を取っていた」ことがパワハラの背景事情とされた点に対し、管理監督責任のある道として「調査結果を重く受け止め、ご遺族に対して、深くおわびを申し上げたものです」とした。

 第三者委は行為ごとに①ハラスメントに当たるか②自死に影響したかを検討したが、回答書は謝罪の対象を①に限り、②には言及しなかった。また、第三者委が「学院の教育方針や教員らの態度が学生を自死に追い込んだ大きな要因になったものと考えられる」とし、「最終的な要因は確定できないが、少なくとも学院における学習環境が要因となったと認定でき、自死との相当因果関係は認められる」とした部分にも一切触れていない。

 植松弁護士によると、自死に対する賠償をいったん切り離し、まずは道が認める部分に限った形で和解を進めることを打診したが、道側は「最終的な和解以外には応じられない」と拒否しているという。

 植松弁護士は「謝罪が自死に対するものでなかったのであれば、遺族は受け入れていなかった。遺族はショックを受けており、時間をかけて対応を話し合うが、訴訟での解決も検討する」と話している。

 鈴木直道知事は10日の定例会見で、「代理人弁護士間で協議しており、具体的な内容についてはコメントを控えたい」と語った。(野田一郎)

第三者調査委員会が認定したパワハラ行為

・2017年 対象者(自死し…

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