県立劇場で開かれている第68回県吹奏楽コンクール(県吹奏楽連盟、朝日新聞社など主催)は27、28の両日、中学生Aパートの演奏があり、16校が九州吹奏楽コンクールの代表選考会への進出を決めた。また、審査員特別賞を竜北、楠、藤園、熊本学園大付の4校が受賞。楠を除く3校が南九州小編成吹奏楽コンテストの代表選考会への出場を決めた。
審査結果は次の通り。(◎は九州吹奏楽コンクールの代表選考会に選出、○は南九州小編成吹奏楽コンテストの代表選考会に選出)
【金賞】◎出水南、◎帯山、鶴城、◎清水、◎武蔵ケ丘、西山、松橋、◎楠、東野、富合、小川、◎本渡、◎益城、◎北部、多良木、◎長嶺、◎龍田、◎稜南、◎詫麻、京陵、◎西合志南、○熊本学園大付、◎山鹿、◎西合志、八代第一、◎錦ケ丘
【銀賞】飽田、合志、西原、湖東、鏡、江南、鹿南、合志楓の森、○竜北、鹿本、出水、河浦、白川、武蔵、東部、御船、三和、○藤園、玉名、大津北、桜木、花陵、千丁・八代第四・八代第五、下益城城南、菊陽、阿蘇
【銅賞】大矢野、泗水、あさぎり、荒尾第三、錦
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(28日、第68回熊本県吹奏楽コンクール 千丁中・八代第四中・八代第五中 中学生A銀賞)
夏休み初日の20日、八代第四中(熊本県八代市)の音楽室には、デザインがばらばらの体操着を着た生徒たちが集まっていた。休憩時間になってもどことなくぎこちない。村岡成子教諭が「しゃべらんね」と促すとようやく、近くの生徒同士の会話に笑顔が混じり始めた。
八代市立千丁中、八代第四中、八代第五中の3校は今年、初めて合同バンドを組んで熊本県吹奏楽コンクールのA編成(50人まで)のステージに臨んだ。
各校は部員数が10人ほどと部員不足に加え、半分以上が1年生で初心者も多い。昨年は千丁中と八代第五中が15人までのB編成で演奏。八代第四中は出場を見送った。今年は3校それぞれでB編成として出ることもできたが、規則変更で複数校による合同バンドも全日本吹奏楽コンクールなどの全国大会に参加できるようになったのを踏まえ、組むことを決めた。
保護者の力を借りて土曜に合同練習をしてみると、1人1人の音が目立つ少人数ではおっかなびっくり音を出していた1年生が「思い切って演奏できるようになった」(村岡成子教諭)。同じ楽器のお手本が近くにいるからか、音色も変わってきたという。
ただ、平日はそれぞれの学校で練習せざるを得ない。基礎練習のやり方をそろえ、5、6月の合同練習ではパート練習に時間を割いた。コンクール曲の合奏に臨んだのは、県吹奏楽コンクールまで約1週間となった夏休み初日の20日が初めてだった。
自由曲の「星屑(ほしくず)の舞う空で」(江原大介作曲)は小編成でも演奏される曲だ。穏やかで豊かなメロディーを聴かせるパートと、軽快で歯切れの良いパートが交互に表れる。
問題になったのは、パート人数の偏りだった。少人数の各校ではそれぞれで演奏が成り立つよう、メロディーを担うことが多い木管楽器は厚いが、中音域を支えるホルン奏者は3校合わせてゼロ。
「ここ、ホルンの音が本当はあるんです。テナーサックス、この音吹けますか」「伴奏の所はもっと楽に吹いていいです」
パートを振り替えたり、大人数での音のバランスを取るために「引き算」したり。1週間は、音程やリズムを合わせ、表現をつけてとあっという間に過ぎた。
迎えた本番、3校はのびやかな演奏を披露し、銀賞を得た。「この1週間で、ずいぶん成長した。思ったよりのびのび吹けていた」と村岡教諭。
八代第五中の岡村祈希(きき)部長(3年)は「もう少し合同練習があったらとは思ったけれど、息をそろえて、楽しく演奏できた。少人数の方が合わせやすいけど、A編成のほうが迫力があって、いい演奏ができたと思う」。千丁中の井戸和斗部長(3年)は「緊張はあったけど、チーム全体でやることをやって臨めた。他校同士、初めは話すのも大変だったけれど、1日1日、音色も変わっていった」と充実感をにじませた。
演奏後の写真撮影では3校が入り交じり、楽器を手におどけたポーズを決めていた。(杉浦奈実)