岡山県立岡山操山高校の2年男子生徒(当時16)が2012年、所属していた野球部の監督による激しい叱責(しっせき)が原因で自殺した問題で、県教育委員会は再発防止策の修正案をまとめた。遺族や有識者が素案に寄せた意見をもとに、この事案の概要や子どもの人権に関する記載などを追記した。遺族側は1日に内容の説明を受けたが「私たちの理想には程遠い内容」と不満をにじませた。
再発防止策の素案は今年4月に公表され、六つの資料で構成される。事前に示された遺族は3月、内容が不十分などとする76件の意見を提出。県教委は6月に4人の有識者から意見を聞いた。
県教委は、今回これらを踏まえたとする修正案を示した。修正案では、資料の柱の一つとなる「体罰・不適切な指導・ハラスメント防止ハンドブック」に、「こども基本法」の条文を紹介。全ての子どもが個人として尊重され、基本的人権が保障されることなどが示されていると追記した。操山高校の事案の概要も新たに記載した。
修正案に対し、遺族側は、21年3月に第三者調査委員会が認定した自殺に至るまでの事実関係を網羅していないことを疑問視した。恐怖心や不安感を与えた威圧的な行為、心身に過度な負荷を与えた行為など、具体例の記載がないと指摘した。
「児童生徒の自殺防止対策基本方針」についても、遺族側は修正が不十分だと指摘した。「遺族の心のケアに対する考え方を追記すべきだ」とした。
また自殺予防を目的とした児童生徒への学校生活アンケートについて、県教委が「率直な回答ができなくなる懸念がある」として結果を公表しないとする点を批判した。「(自殺に関する)報道をきっかけに操山高校は大きく改善した。結果公表は、対策として不可欠」と公表を強く求めた。
この日の遺族説明は非公開で行われ、4時間余りに上った。県教委は「遺族との打ち合わせ」という位置づけで、公開しなかったと説明している。県教委は、今回の遺族からの指摘について追記するかを改めて検討するという。
男子生徒の父は終了後、「県教委の問題意識の低さは相変わらずだ」と批判。その上で「保身ではなく、実効性を第一に考えた再発防止策を一刻も早く策定してほしい」と述べた。(小沢邦男)