「短歌のネットプリント(短歌ネプリ)」を知っていますか。コンビニのマルチコピー機にあるネットワークプリントサービスを活用して発表された、短歌作品のプリントです。SNSなどに発表された作品を印刷したものではなく、作者が事前にレイアウトした短歌作品を、コンビニで出力して初めて読むことができる仕組みです。短歌情報サイト「最適日常」(https://saiteki.me/)を運営する月岡烏情(うじょう)さん(46)は短歌ネプリの収集にも力を入れ、この5年間に発行されたものだけで2千紙を超えました。手弁当で短歌ブームを下支えする月岡さんに、ネプリの魅力やサイトを運営する思いを聞きました。

写真やイラストを交えたものや、大小の冊子タイプなど、バラエティー豊かな短歌ネプリの世界。紙の大きさやレイアウトまで作者が事前に設定する=月岡烏情さん提供

短歌を読むには紙がいい

 ――作者がSNSなどで告知した番号をマルチコピー機に入力すると作品が出力される短歌ネプリは、2010年代の初頭から始まったそうですね。月岡さんが手に取ったのはいつごろですか

 20年に存在を初めて知りました。ウェブ上の画面で読む短歌より、紙に印字されたほうが、すっと頭に入ってきました。日頃ウェブに携わっていますが、短歌を読むにはやはり紙の方がいい。「もっと読みたい」と探し始めると、探せば探すほど出てきて、毎日のように発表されている。あまり注目されてないけれども、すごい文化では?と思ったんですよね。これは絶対、誰かが集めておかないといけないと思い、収集を始めました。

 ――さまざまな方がネプリで作品を発表していますね

 まだ名前の知られていない方もいれば、歌集を出している著名な歌人もいます。ふたり、あるいはグループで出しているものも。その時代の文化をうかがい知る上で、最先端のトピックや技術が詰め込まれている作品ばかりが価値が高いわけではありません。有名無名問わず、いろんな人が参加していること自体、大きな価値があると思っています。

コンビニに足を運びこまめに出力

 ――同感です。新聞歌壇でも、例えばコロナ禍で詠まれた歌が市民の暮らしをそのまま映し、歌を通して生活史が刻まれていることを実感しています。短歌ネプリに出会って5年、現時点でどのぐらい集まりましたか

 20年から収集を始め、21年は602紙、22年は485紙、23年は530紙を収集。24年も12月3日時点で525紙となり、合計すると2千紙を超えました。みんなやっぱり自分の作品を読んでもらいたいんですよね。ネプリと一口に言っても、15首をA4カラー1枚の両面に収めたもの、40首をA3の白黒1枚に収めたものなど紙の大きさも作品数もまちまちで、それぞれを「1紙」「2紙」と数えています。

ファイルに収められた短歌のネットプリント=月岡烏情さん提供

 ――ご自身でコンビニに行って購入しているのですね

 はい、作者がネットワークに…

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