連載「HANABI」第9部 海外へ向かう大曲(3)
山梨県の市川三郷町は花火のまちで知られる。その起源は、甲斐国(かいのくに)を治めた武田信玄が戦時の狼煙(のろし)を上げたことに始まるとされる。
ここで開かれる「神明の花火」に、中東オマーンの大使が訪れたのは2022年8月のことだ。
大使は感銘し、「国王にお見せしたい」と地元の「斉木煙火本店」と「マルゴー」に母国で打ち上げることをリクエストした。
- 【連載(2)】日本の花火に立ちはだかる「トランプ関税」 一国に偏るリスクを痛感
両社は、海外取引で実績のある東京、茨城、秋田の3業者に協力を求めた。その一人が、秋田県大仙市の「響屋大曲煙火(ひびきやおおまがりえんか)」社長の斎藤健太郎(45)だった。
斎藤は米国大手から「中東は資金力があり、打ち上げる花火の数もけた違い」と耳にしていた。「新規開拓につながる」と快諾した。
23年秋。斎藤ら一行はオマーンに渡り、王室関係者らと交渉のテーブルについた。日本側は花火を輸送するコンテナ船の手配、筒の用意、設営スタッフの確保を依頼。オマーン側は「どんな演出をするのか」とデモ動画の作成を求めた。
「JH」に込められた意味
交渉の後、一行は打ち上げ候…